どうも、路傍のおっさんです。今日からは、「5+1」について書いてきます。マーケティング思考の中で一番マーケティング施策分析の軸に使っている考えです。
「5+1」について
「5+1」は消費者の意思決定要素や比較検討要素をマーケティングを行う側から考えると5つの並列要素と1つの要素に分類できるという考えです。
「5+1」の5について
「5+1」の5つの要素を書きます。
- 信用、信頼(Trustable)
- 想像可能(Imaginable)
- 利益(Benefit)
- 必要(Need)
- コスト(Cost)
上記の5つが人が何か商品やサービスを購入する時に考えている要素になります。
人はこの5つの要素のうち、どれか一つでも自分の閾値や許容値に届かない場合は商品やサービスを買いません。
ちなみに、金銭を払うというだけでなく、「いいねをする」についてもこの5つの要素が揃っていないと人はいいねをしません。
各項目を具体的に見ていきますが、一度、全自動掃除機を買う事をイメージしてから読み進めてください。
信用、信頼(Trustable)
信用、信頼(Trustable)の意味は「商品やサービス、販売元について信用できないと買わない」と言う事です。
全自動掃除機を買うときに、価格.comで調べて、同じ商品が他と比べて7割程の価格で売っているfakeec.comというECサイトがあるとします。
しかし、そのfakecec.comの日本語の文法が明らかに間違っていて怪しい場合はそのECサイトで購入せずに、発売元の掃除機メーカーのECサイトやamazonや楽天で買うという行動をとると思います。
これは、全自動掃除機を売っているfakeec.comのECサイトが信用できないためにそこでは商品を買わないと言う事です。
他の例としては、SNSで若者が店内で不衛生な行動をとった動画をアップしているところがニュースになったりしますが、それを見てしまうと、その店舗の系列店にも行かなくなったり、足が鈍ったりすると思います。
これは、不衛生な行動をとったアルバイトがいる店ではなく系列店なだけでもおこります。同じ事が行われている可能性を考えてしまい、系列店の全てに対して信用が下がってしまうのが原因です。
ちなみに、そういう不祥事が起きた後でも、行く人と行かない人がいます。
これは5つの要素の許容範囲が人によって異なる事を表しています。
想像可能(Imaginable)
想像可能(Imaginable)には2つの意味が存在します。
1つ目の意味
1つ目の意味は「現在から商品やサービスを購入するまで過程が明確に想像する事ができないと買わない」という事です。
一昔前はネット商品を買うという文化がありませんでした。
友人がネットで全自動掃除機を買って商品が家に届いた事を聞き、そのECサイトが信用に足る事は理解していても、近くの家電量販店で買ってしまう。そのような心理です。
上記は極端な例ですが、一般的な身近な例を挙げるとECサイトでアカウントを作らなくてはいけない場合です。
アカウントを作る事は想像可能だと思われるかもしれません。しかし、どのようにアカウント作るのか、メールアドレスだけでいいのか、名前も必要なのか等は初めてアカウント作るなら不明です。
よって、商品を買ってもいいかなと思った現在から商品の購入するまでの過程が明確に想像できないため、同じ商品や代替商品がamazonや楽天で同じ価格で売っているとそちらで購入してしまいます。
他にも「amazon go」で以前ニュースになっていたと思いますが、レジが無いコンビニです。店内のカメラとアマゾンアカウント等を用いて、レジを用いず買い物ができるという仕組みの店舗です。
これを聞いた私の知人は「えっどういう事?」と言っていました。この知人は自分の近くにamazon goがあっても商品を買う事は無いはずです。購入するまでの過程が想像できないからです。
同様な例として、最近セルフレジをスーパーでよく見るようになりました。セルフレジが空いているのに、パン一個を持って有人のレジの長い列に並んでいる人を見ることがあります。そのセルフレジは現金とクレジットカードに対応しているのですが、有人のレジで待ちます。
これは、商品を購入する手段としてセルフレジと有人のレジがあったときに、想像可能(Imaginable)を比較検討要素として比較した際、セルフレジに対して現在から購入するまでの過程が明確に想像する事が出来ないために有人のレジを選んでいると考えられます。
2つ目の意味
2つ目の意味は「商品やサービスを購入した後、それを利用または体験している自分が想像できないと買わない」という事です。誤解を恐れずもう一歩踏み込んだ表現をすると「商品を購入して、利用して満足している姿を想像できないと買わない」とも表現できます。
例えば、全自動掃除機に友人から口頭で聞いたとします。話を聞いて、フルオートで部屋を掃除してくれる事と掃除の精度、価格、発売メーカーの信用に対しても問題はないのですが、それですぐに購入するとはならないはずです。
youtubeなどで全自動掃除機の使い勝手を説明している動画を確認してから購入を決めると思います。
他の例としては、多機能洗濯機を考えみます。前提として洗濯機が無いから購入検討をしていて、予算も会社の予算内です。
TVショッピングで多機能部分の紹介をしていて、布団も洗える、スニーカーモードもある等様々な機能を実演して、自分にとってもその機能は必要であると確信しているとします。
しかし、「スニーカーモードはこの設定をONにして、あの設定はOFFに設定して、あれこれ設定します」とTVショッピングで説明されると、それを使って洗濯している自分が想像できないため、商品を買いません。
この場合、自分が使いこなせないために利益(Benefit)や必要(Need)が感じられないという意見もあると思います。
しかし、マーケター側から考えると想像可能(Imaginable)のこの2つ目の意味は利益(Benefit)と必要(Need)などと独立して考えるべきことです。
利益(Benefit)
利益(Benefit)の意味は「商品やサービスに利益やメリットが無ければ買わない」という事です。
全自動掃除機において、部屋の隅の掃除が弱く全体として8割程度の掃除をするとします。全自動掃除機が8割も掃除してくれる事を自分にとって利益と感じたら商品を買います。逆に8割じゃなくて10割掃除して欲しいと思う方は利益やメリットを感じないので買いません。
必要(Need)
必要(Need)の意味は「商品やサービスが必要で無ければ買わない」という事です。
全自動掃除機において、掃除機をかける事が大好き人がいるとします。
その人も全自動掃除機が代わりに掃除をしてくれて、自分の時間ができるというメリットは理解していますが、掃除機をかける事が大好きなので、全自動掃除機は必要では無く買いません。
コスト(Cost)
コスト(Cost)には3つの意味が存在します。
1つ目の意味
1つ目の意味は「金銭的なコスト」という意味です。言い換えると「商品やサービスが金銭的な予算内に無ければ買わない」という事です。
全自動掃除機を購入するのに、予算を8万円と決めていて、目の前の商品が12万円なら買いません。
2つ目の意味
2つ目の意味は「時間的なコスト」という意味です。言い換えると「商品やサービスを購入するのに長時間かかれば買わない」という事です。
全自動掃除機を購入しようとして、在庫切れで3ヶ月待ちと店員から伝えられた時、その商品を買いません。
買わないというのは少し強引かもしれませんが、代替商品を探したり、他で売っている店舗を探したりすると思います。3ヶ月待ちと言われ即断即決で予約をする人の方が少ないと思います。
3つ目の意味
3つ目の意味は「精神的なコスト」という意味です。「商品やサービスを購入するのに精神的な負担がかかれば買わない」という事です。
全自動掃除機を購入しようとした場合に、周りの主婦から、「あそこの奥さん、自分で掃除機かける事もしないぐうたら主婦」と陰口を言われていたら買いません。
全自動掃除機よりも、高校生がエロ本を購入する場面を想像してもらうのが一番簡単かもしれません。
店員から変な目で見られるのではないかという精神的な負担が発生し、人によって許容値は違いますが、許容出来なければ書いません。
「5+1」の+1について
「5+1」の+1の要素を書きます。
- 言い訳(excuse)
「5+1」の5の要素について、下記のように書きました
人はこの5つの要素のうち、どれか一つでも自分の閾値や許容値に届かない場合は商品やサービスを買いません。
しかし、+1の言い訳に関しては、この1つの要素だけ満たせば商品やサービスを購入します。
すなわち、5つの要素が満たす満たさないに関わらず、+1の要素だけ満たせば購入するというトランプのジョーカー的な役割です。
言い訳(excuse)
言い訳(excuse)の意味は「買わない予定の商品やサービスを、人は言い訳して買う」という意味なります。
例えば、何か他に買いたいものがあるために、昼飯で普段800円使っていたのを300円までに節制している人をイメージしてください。
この人が、コンビニで一般平均よりも2倍の金額するビールを買うでしょうか?
客観的に考えるなら、そもそも2倍の金額に関わらずビールを買わないという結論が出てきてもおかしくないと思います。
しかし、この人は実際に仕事で3.5時間の残業をした後に寄ったコンビニで2倍の金額するビールを買いました。
この人は2倍のビールを買うときに「今日は頑張ったから今日ぐらいは自分にご褒美してもいいよね」と自分に言い訳をしていました。
自分にご褒美というフレーズを聞いた事があると思います。これは言い訳の常套句です。
「5+1」の補足説明
「5+1」について、書いてきました。
自分でアウトプットしていて、この部分疑問に思われるだろう感じた部分があったので補足説明をします。
+1の存在理由
読んでいただいた人の中には、+1の言い訳の部分でビールを買った時は、その人の5つの要素は満たされていたと考える人もいると思います。
実際に下記の状況が考えられます。
- 信用、信頼(Trustable):麒麟や恵比寿なので、信用、信頼は満たす。
- 想像可能(Imaginable):コンビニで精算するだけなので1つ目の意味は満たす。2つ目の意味も残業で疲れた後に飲むいつもよりプレミアムなビールを飲んで満足しているところは明確に想像できるので満たす。
- 利益(Benefit):残業で疲れた気分をリフレッシュするという利益がある。
- 必要(Need):その人にとっては疲れた気分をリフレッシュする必要があった。
- コスト(Cost):節制しているが、その瞬間においてはコストは予算内だった。
これは、1人の人間であれば上記を想定する事は簡単ですが、実際にマーケティングを行う際はターゲットは一人ではなく一定のボリュームで考えます。
例えば、「年収600万円の世帯に対して少し価格帯が高い商品を購入してもらうにはどうしたらいいか?」などを考えます。
普通に考えればコストが合わないので買わないという結論が出てきてもおかしくはないですが、その結論だと上司に怒られるだけだと思います。
マーケティング思考の本質は「言語化」と「物事を多方面から捉える事」と書きました。
「5+1」はマーケティングを行う側から考える消費者の意思決定要素や比較検討要素になり、物事を多方面から捉える手助けになるものです。
この場合「年収600万円の世帯に対して少し価格帯が高い商品を購入してもらうにはどうしたらいいか?」という事象を多面的に捉えるには「5+1」という考え方を使うという事です。
+1の存在理由とは「年収600万円の世帯に対して少し価格帯が高い商品を購入してもらうにはどうしたらいいか?」について、どういう言い訳が出来れば商品を購入するかという方面から捉えて考える事ができます。もちろん、5つの要素を満たすにはどうしたらいいのかという方面で捉えて考えるという事もできます。
想像可能(Imaginable)の2つ目の意味の存在理由
読んでいただいた人の中には、想像可能(Imaginable)の2つ目の意味「商品やサービスを購入した後、それを利用または体験している自分が想像できないと買わない」について疑問があるかもしれません。
商品を購入した後の自分が想像できなければ、利益(Benefit)と必要(Need)を考える事ができないので、想像可能(Imaginable)の2つ目の意味が独立して存在している意味があるのかという疑問があると思います。
マーケティングを考えた時に「商品やサービスを購入した後、それを利用または体験している自分が想像できないと買わない」という方面から捉えて考える事ができるのか、そしてこの方面から捉えて考える必要があるのかという風に言い換える事ができると思います。
一つ例を出します。
鳥丼と豚丼があるとします。この鳥丼と豚丼は同じ店舗で販売されていて、同じ量で同じ金額で基本的なその他の条件も一緒にだとします。
この場合、ヘルシーや国産、満腹になる等の利益(Benefit)と必要(Need)が同じなると思います。
この時に、人は何を考えて決定するのでしょうか。おそらく、気分です。「今日は豚丼の気分」という事です。
そして、「今日は鳥丼にしよう」と考えている人が、目の前の客が美味そうに豚丼を食べていると「やっぱり豚丼にしよう」となる場合があります。
この方面を補うのが想像可能(Imaginable)の2つ目の意味です。
「5+1」を実際にどのように使うのかは次で書く予定ですが、想像可能(Imaginable)の2つ目の意味の使い方を示すと、先程、目の前で豚丼を食べているところ見て豚丼に変えたと書きましたが、これは目の前の人に自分を重ね合わせて、豚丼を食べている自分を想像させる事できたから鳥丼から豚丼に変更したのです。
だとしたら、美味そうに食べているシーンのポスターを食券機の前に貼る事も想像できると思います。
以上、ここまで読んでもらってありがとうございます。
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